▼担当学生記者
前田奈津(22歳:取材時)
▼取材日
2004/7/21(水)
▼取材時間
13:00~16:00
▼取材地
神楽坂の町会事務所
▼取材の雰囲気
時に振りつきで芝居のワンシーンを再現してくださったり、時にべらんめえ言葉で熱くなった経験を語ってくださったり、亀井さんのお話に聞き入ってしまいました。お芝居のエピソードが次から次へと溢れてきて、亀井さんは本当に楽しんで振付のお仕事をされてきたのだなと思いました。
「世界は全て一つの舞台であり、人は男も女もみな役者だ」。これは『As You Like It』の中で、シェークスピアが用いたフレーズだ。亀井さんのお話を伺っている最中、私はふと、この有名なセンテンスを思い出した。
亀井さんが発する言葉は生きていた。感性豊かで、繊細な方だと認識している。舞台の振り付けの話をされていた時は本当に楽しそうにしていらした。役者とのエピソードを交えながら、情景を巧みに説明してくださる。演劇に疎い者にも場面の画がリアルに浮かんだ。ご自身が日頃楽しみにされているという祭の話をされている時も、同様の印象を私は覚えた。
亀井さんの表現は、豊富な読書体験に裏打ちされたものであった。思春期から現在まで本は常に側にあったとおっしゃっていた。「何か影響を受けた本がおありですか」との質問に「特にはない」とおっしゃっていたが、様々な作家や書名がインタビューの中で顔を覗かせた。ロマン・ロランやロレンス、最近は浅田次郎も読まれるとのこと。乱読がスタイルであるそうだが、お話やお考えの端々に読書家の聡明さがうかがえた。聡明などという言葉を使うと、亀井さんは間違いなく否定されるのであろうが。
カメラマンとしての構図を意識した活動が、盛り付けのお仕事で活きたり、フェンシングの経験が振り付け師の道を開くなど、体験が積み重なりご自身の人生を形作ってこられたのだなと思った。それは分厚くて濃い年輪のようだった。「真面目ではなく、一生懸命」仕事をしてこられたようだが、偶然と必然から得た職業をその都度真剣にこなしてこられたからこそ、体験はきちんと積み重なっていくのだと感じた。
ただ、「真面目ではなく」とおっしゃる亀井さんは、余裕を持って生きることも重要視されていた。そこが亀井さんらしさが如実に現れるところでもある。「社会の思い通りに生きてもつまらない」、「いつでも他の仕事に移ってかまわないと考えていた」。「ちゃらんぽらんに生きていないとダメ」(今回のOnlyOneWord)とおっしゃる真意の程は察するに余りある。が、戦中戦後、高度成長、バブル崩壊と混迷の日本を生きてこられた中で、ご自身が固定観念や既成の価値観に捉われずに歩いてこられたことは私でも分かった。「All the world’s a stage」とはシェークスピアがよく使うフレーズだが、亀井さんはご自身の人生の舞台でその時々に課せられた役をご自身なりに、全うされてこられたのだと思う。そして一つの役に固執することなく、次のステージへ、次の役へと踏み出されてもいらっしゃる。誰かの思い通りに生きるのではなく、主体的に生きる。それは当時としては、とても難しい生き方だったのではないだろうか。「後悔なんてない」とおっしゃるその軌跡は時代を超えて、私の胸を打つものだった。「今、若返って、二十歳でこの現代を迎えたらどんな人生設計をされるか」との質問に、「今までと変わりはないだろう」とお答えになった。その言葉どおり、仮に今二十歳でいらしても亀井さんはご自身が考える、自分らしいスタイルで臨まれるのだと思う。前衛的なところも多く見受けられた亀井さんであるから、新進気鋭のベンチャー企業家になるかもしれないなどと想像もしてみた。
“一生懸命、ちゃらんぽらん”に生きる。それは一見相矛盾する姿勢でもあり、亀井さんが言わんとする本質の部分は、残念ながら今の私では理解できるものではなかった。ただ、その姿勢こそ亀井さんがカッコイイといわれる所以であるということは、‘何となく’分かったつもりだ。そして時には斜に構えることも大切かもしれないと思うに至った。余裕を持って生きるという亀井さんのスタンス。それは行き詰まりを多く抱え、効率の良い生き方が良しとされる現代社会に投げかけられる、アンチテーゼにも聞こえたからだ。自分の年輪の薄さに落胆しつつ、そんなことを考えた。
一見同じような感じに思える言葉ですが、全く意味が違います。
・真面目は「真面目であること、真面目であるさま、実直」
・一生懸命は「命がけで物事をすること」
真面目という形に囚われることで自分の視野、考えを狭くして しまうよりも、形にとらわれることなく広い視野で興味を持っ たことに一生懸命取り組んでいくという考え方です。真面目な 事はいいことだけどそれにとらわれすぎてはただの面白みのな い頑固者になってしまうのです。自分の考え方は亀井さんに似ているところがあるように思えました。これからもなるべく形にとらわれることなく、良い意味で周り、自分を裏切っていきたいです。