▼担当学生記者
熊倉智子(22歳:取材時)
▼取材日
2004/9/20(月)
▼取材時間
13:00~15:00
▼取材地
田代さんの事務所@新丸子
▼取材の雰囲気
取材は田代さんのご自宅の1階にある事務所で行われました。事務所には、田代さんが今まで手掛けられた住宅の模型なども飾られていました。田代さんはお話がとても上手で、とても和やかな雰囲気の中で取材は進みました。取材を通して、田代さんのお仕事に対するこだわり・考え方が感じられるお話をたくさんお聞きすることが出来ました。
田代さんはとても意志の強い方だなと思いました。田代さんのお話によると、個人住宅の設計は手間がかかるし、収入に関しても、もっと大きな建築物を手がけた方がよいのだそうです。でも、田代さんご自身は個人住宅にとても強い想いを持っていらっしゃって、手間や金銭的なことがあっても、一番好きだから手がけているとおっしゃっていました。そんな中、田代さんがおっしゃった「設計事務所の仕事は楽じゃないけど、楽しい」という言葉が私はとても印象に残りました。田代さんは「今やっていることはとても大変だけど、一番好きだし、やりがいがある」とおっしゃっていて、そういうことを体現なさっている方の言葉だからこそ、響いたのかなと思います。
正直、私は義務感から行動することがよくあって、「好きだから」とか「やりがいがあるから」という積極的な理由で行動することがなかなかできません。だから、何か取り組み始めても途中で辞めてしまいそうになったり、悩んだりしてしまいます。どうしたら、もっと主体的に行動できるのかなあと田代さんのお話を伺って、考えてみました。 田代さんは、「家」という空間をとても大切に考えていらっしゃいます。特に食事をする場所を最も大事にされているとのことでした。その理由は「食卓は家族みんなが顔を合わせて、時間を共有する場所だから」ということでした。「家」をただのモノとして捉えているのではなく、人が触れ合う空間として大事になさっていることが感じられました。こういう様子から、田代さんは自分がどういうことを大切に思っているかということをよく分かっていらっしゃるような気がします。そして、その自分の関心がある事に対して、向かっていく姿勢を持っていらっしゃるように思います。私は自分が何をしたいの分からないと言ってしまいがちです。でも本当は、自分の気持ちを見逃しているだけで、何か関心のあることはある気がします。だから、些細なことでもいいから自分が何に関心があるか気付き、そのことと向き合ってみる、ということを心がけてみるといいのかなと思いました。
田代さんは独立してから80軒以上の個人住宅を手がけた中で、今まで一度もクレームがないそうです。これはとてもすごいことだと思います。家という建てる人の人生にかかわる大きな買い物=取引をされる中で、問題がないということは、それだけ、クライアントとの信頼関係がしっかりと築かれていることなのだろうな、と思いました。並大抵の努力ではできないことですよね。基本設計ができあがるまでに、1年間、根気よくクライアントの方と家をつくりあげていくスタイルを持つ、田代さんだからこそできることだと感じました。クレームがないというと、クライアントの要望に対して、それをその通り実行しているように考えてしまいがちなのですが、田代さんは、「建て主も、建築家も、工務店さんも、みんな対等なんだ」とおっしゃっていました。親密な関係を築くためには、へりくだることなく、腹を割って、真摯に人と向き合うことが大切なのだと思いました。まさに、建て主と、建築家の一対一の真剣勝負だなあと聞いていて感動しました。これは私たちの、普段の人間関係においてもいえることですよね。どこか相手に都合のいいことだけを言ったり、陰で文句を言ったりしてしまうのは、本当の関係とは言えません。田代さんは、家への情熱だけでなく、人との付き合い方も、大切にしていらっしゃるのだな、と痛感しました。また、クライアントとの対話を幾度も重ねる上で、彼らが「最も大切にしていることをひきだし、それを家に置きかえていく」という趣旨のお話もしてくださいました。これはもう、家の設計のみならず、その人、その家族の今後の人生をも見通す、ハウス・カウンセラーだなあと思いました(こんな言葉があるかはわかりませんが…)。
人はそれぞれ無限の選択肢を持っていて、少しでも自分が目指すべき方法が決まったら、目標をしっかり見据えること。最初の一歩が肝心だよ、と田代さんはおっしゃっていました。目標に対して、最初の一歩目がどんなにぬかるんでいても、険しくても、その目標に到達する道ならば、それを選ばなければならない。楽な方を選んでしまうと、何年後、何十年後にまったく違う場所に来てしまっている、ともおっしゃっていました。自分が本当にしたいことがあったらあきらめないこと。自分がやるべきことをそう簡単に放り投げたり、地に落とすことなく、それを守り抜くことも大事だそうです。それを守るために辛酸を舐めることも、時には必要だと。そこまでして維持しなければ、やがて崩れてしまうだろうとのことでした。中々厳しいことですよね。時には濃霧の中で目標を見失ったり、道に迷ってしまうこともあるかもしれません。けれど、そのときにこそ、この言葉を思い出したいなと思います。今、私は、少しずつですがやりたいことを具体的に見出しつつあります。不安もありますが、この言葉を信じてみたいな、と思えました。